洋服ダンスに入りきらないほど服があるのに、着たい物が無い。
冷蔵庫に、いつから入っているのかわからない食材がある。
山のように積んである本の前に立っても、読みたい本がない。
すき間というすき間に物が詰め込まれ、床に溢れ出して散らばって、
テーブルやタンスの上には、必ず何かしら物が乗っている状態・・・
小さな地震でも、落下の危険性が考えられるようでは、
安心して暮らすこともできません。
このような状態の家は不健康な家です。
ここでの暮らしは、不必要な物との戦いの毎日になってしまいます。
これでは、住まいが、いつの間にか、物に乗っ取られているようなもの。
そんな家は「住まい」ではなく、「物置」だといえます。
本来、物は人の生活を助けてくれるものであるはずなのに、
大量の物は邪魔を通り越して、人を苦しめる存在に成り果てます。
住まいをスッキリとした状態に保ち、散らかさないためには、
「収納スペースに見合った量の物しか持たない」、ということが基本原則となります。
つまり、物の量とスペースのバランスを考えるのです。
そして、使うときのことを考えて、収めるべきところに収めるというのが収納のルールです。
断捨離では、収納スペースに対して、
7(見えない物):5(見える物):1(見せる物)
の比率で管理する総量規則の法則があります。
7割の見えない収納とは、タンスやクローゼット、押入れ、冷蔵庫の中などです。
5割の見える収納とは、ガラス扉のついている食器棚や、扉のついていない棚などのこと。
残り1割の見せる収納とは、趣味やお気に入りのものを飾るスペースのことです。
お鍋ひとつ取り出すのに、いちいち他の小物を出さなければいけなかったり、
スプーンをしまうために、キッチンを端から端まで
横切らなければならなかったりするようでは困ります。
収納したことで物は見えなくなるかもしれませんが、
結果的に、見えないところで管理する物の量は確実に増え、
やがて押入れやクローゼットの奥で忘れ去られた物たちに、
ホコリが蓄積したり、カビなどの菌が繁殖したり、ダニの住処になったりして、
不健康な状態を招いてしまいます。
昔の日本の家屋というのは、その部屋に住んでいる人が立ち去ると後には何も残らない、
その人の存在のかけらも、その部屋で行なった活動も、跡形も残らないような状態でした。
それは、使っていた物を、すべてコンパクトに畳んで、押入れに片付けてしまっていたからです。
これこそが、物に支配されることのない、住んでいる人が主の理想の住まいと言えます。